Top / 遺言の基本的なしくみ

目次

1.「遺言」は「ゆいごん」?「いごん」?

「遺言」は世間一般的には「ゆいごん」と読まれることが多いですが、法律上は「いごん」と読むのが実は正解です。

ただ、広く使われる「ゆいごん」でも間違いではありませんし、「いごん」と読むと却って間違っていると思われて訂正されることもあるかも知れません。

要は、「遺言」をどう読むかの問題は、遺言の内容に影響するような重要な話ではない、ということです。

2.法的な意味における「遺言」

むしろ大事なのは遺言の持つ法的な効力の話です。
 
(漢字の読み方の問題は別として、)法律(民法)上「遺言」と呼ばれるものには法的な効力が与えられることになっています。それは、遺言が、それを遺した人(=遺言者)の最後の意思表示だからです。

亡くなった人の最後の意思の表明だから尊重しましょう、そして遺言の内容が実現されるように法が手助けしましょう、というわけです。

(1)遺言といえども絶対ではない

それならば、どんなことを書いても法的な効力が絶対に与えられるのか、といえば、そうではないところがまた遺言の難しいところです。

以下の2つの例を考えてみましょう。

例① 

親が「子供同士兄弟仲良く暮らすように」という遺言を遺して亡くなったとしても、その言いつけを残された子が守るかどうかは誰にも分かりません。そして、仮に守らなかったとしても、それを裁判に訴えて法的に守らせる、といったこともできません。

つまり、このような「親の言いつけ」「親の気持ち」的な遺言内容に法的な効力を与えることは適当ではない、ということになります。

例②

また、「自分の遺産は全部慈善団体に寄付する」という遺言があったとしましょう。

その気持ちは非常に立派ですが、この遺言に絶対的な法的効力が認められたら、残された相続人はがっくりしてしまいます。当てにしていた遺産が1円ももらえないのですから、場合によっては生活に困窮してしまう相続人もいるかも知れません。

このような場合に、遺言の内容だからといって絶対的な効力を認めることは適当ではない、ということになります。


(2)結局、「遺言」とは何なのか?

上記の例①②のように、どんな遺言内容にも絶対的な法的効力を認めるとすると混乱を生じるため、民法は、法律に定められた遺言事項(「法定遺言事項」と言います)を民法に定められた方式に従って遺言した場合にしか法的効力を認めないこととしました。

ただ、次の2つの点には注意が必要です。

  • 例①の「親の言いつけ」「親の気持ち」のような事項は、法定遺言事項ではない(=法的効力はない)ものの、遺言の中に書くこと自体は何ら差支えありませんし、気持ちを伝えるという意味ではむしろ積極的に書いた方が良い場合すらあります(これを「法定外事項」と言い、一般的には「付言事項」と呼ばれています)。 
  • 例②のような遺言であっても、遺言の法的効力自体が否定されるわけではありません。
    その代わり、一定の範囲の相続人に、民法上認められた最低限の遺産の取り分(遺留分)に基づき、その取り分相当の遺産を取り戻すことができる権利が与えられています(これを「遺留分減殺請求権」と言います)。

以上を踏まえ、法的効力を生ずるという意味における「遺言」の定義は、下記のようになります。

ここがポイント!

「表意者(意思表示をした者)の死亡によって一定の効果を生じさせることを目的とする相手方のない単独行為(意思表示)であって、法律で定められた事項につき民法で定められた方式に従ってしたもの」

「相手方のない単独行為」という言葉はひとまず置くとして、次の項以降では、法的な効力を与えられる遺言事項(法定遺言事項)とは何か、また民法の定める遺言の方式とは何か、について見ていくことにしましょう。

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