Top / 相続人の確定手続

目次

1.相続人の確定はなぜ重要なのか

相続が発生してまず一番最初に直面するのが、「相続人の確定」手続です。

これは、「被相続人(亡くなられた方)の出生~死亡までの連続した戸籍」を取り寄せて、相続人が誰であるかを公の文書によって明らかにすることをいいます。

そして、この「被相続人の出生~死亡までの連続した戸籍」は、その後のありとあらゆる相続手続(銀行、証券会社、法務局、等々)において提出が求められることになるのです。

なぜこのような手続が求められるのでしょうか?
その理由は下記の通りです。

  • 被相続人の遺した財産をどのように相続するかについては、多くの場合、法律上定められた相続人全員による話し合い(これを「遺産分割協議」といいます)によって決める必要があります。
  • 万が一、相続人の1人でも欠けた状態で遺産分割協議をした場合には、その協議は効力を持ちません。あくまでも相続人全員の参加と合意が、協議が成り立つための条件です。
  • つまり、誰が相続人であるかを確定することは、誰が遺産分割協議の参加者であるかの証明でもあり、非常に重要であるということになります。


2.相続人の確定(戸籍の取り寄せ)手続の概要

これらの戸籍の取り寄せは、被相続人の死亡時点の戸籍を最後の本籍地の役所に請求することから始まり、最終的には「被相続人が本籍において出生した」旨の記載のある戸籍にたどりつくまで続きます。

つまり、これらの戸籍を1つ1つ切れ目なく遡る形ですべて取得していく作業が、相続人の確定手続(=戸籍の取り寄せ)であるということになります。

(1)戸籍はどこに請求すればいいの?

被相続人の本籍地の市区町村役場の戸籍係(名称は各自治体により異なります)に請求します。

ただし、後で触れるように、被相続人の本籍地は結婚等によって移り変わっていることが多く、1つの自治体に対する請求のみですべての戸籍が取得できるとは限りません。

戸籍は、上記戸籍係の窓口で直接請求できるほか、遠方にいる・時間がない等の理由で窓口に行けない場合には、郵送での請求も可能となっています。

(2)戸籍の請求に必要な書類とは?

必要書類の名称
(☆は必須)
備考
戸籍に関する証明書の申請書(☆)東京都杉並区の例
記入例
名称・様式は自治体により異なります。

郵送による請求の場合は、自治体所定の様式でなくても、以下の事項を記載した任意の用紙を送付することでも可(念のため請求者の印鑑を押して下さい)。

 1.請求者氏名・住所・電話番号(昼間の連絡先)
 2.本籍の所在地、筆頭者名
 3.必要な証明書の種類および通数
 4.誰の証明が必要か、その人と請求者との続柄
 5.請求理由(具体的に)

本人又は同一世帯員でない人からの請求の場合、資料などが必要になる場合がありますので、事前に自治体にお問い合わせになることをお勧めいたします。
請求者の本人確認資料(☆)○運転免許証
○パスポート
○写真付住基カード
窓口での請求の場合は原本を提示(郵送による請求の場合は、コピーの送付で可)。

国や地方公共団体の機関が発行した写真付のもの(左の例)は、1点以上提示。

学生証・社員証等、上記に該当しない写真付のものは、下記に掲げる写真なしのもの1点以上と併せて提示。

健康保険証、介護保険証、年金手帳、恩給証書、印鑑登録証明書(申請書に実印押印の場合)等、写真なしのものは、2点以上提示。
委任状東京都杉並区の例戸籍に関する証明書を請求できる人(下記1~3)以外の人が代理人として請求する場合に必要となります。

 1.戸籍に記載されている本人
 2.戸籍に記載されている本人の配偶者
 3.戸籍に記載されている本人の直系血族

※つまり、被相続人の配偶者・祖父母・親・子・孫であれば、被相続人の戸籍に関する証明書を委任状なしで請求できます
返信用封筒A4判の用紙が入る大きさのもの(三つ折り状態で収まれば可)郵送による請求の場合に必要となります。

宛名を書き、必ず切手を貼って下さい。


(3)戸籍の交付に必要な手数料は?

戸籍謄本の交付手数料は、各自治体が条例で定めていますが、標準が政令で定められているために、その額は全国一律です。

自治体の窓口で申請する場合は現金で支払いますが、郵送で申請する場合は、「定額小為替」を申請書と一緒に送付することにより支払わなければなりませんので、注意が必要です。

名称内容交付手数料
戸籍謄本(戸籍全部事項証明 戸籍の原本の全部を写したもの1通 450円
除籍謄本(※除籍全部事項証明 除籍の原本の全部を写したもの1通 750円
改製原戸籍謄本改製原戸籍の原本の全部を写したもの1通 750円
「全部事項証明」とは?
  • 現在、平成6年の法務省令に基づき、各自治体において戸籍の電算化(コンピュータ化)が進められています。
  • 電算化された後の戸籍については、紙の形で管理されているわけではなく、厳密な意味で謄本(=写し・コピー)という概念が当てはまらないため、戸籍に記録されている全ての事項をA4判の地紋紙に印刷して交付することで、従来の戸籍謄本に代えることとしました。これを「戸籍全部事項証明」と呼んでいます(これと全く同じことが「除籍謄本」と「除籍全部事項証明」の関係にも当てはまります)。
  • 「戸籍全部事項証明」の機能としては「戸籍謄本」と何ら変わりはありませんが、筆頭者以外の人で電算化される前に戸籍から除かれた人は、電算化後の戸籍には移記されませんので、相続人確定の目的でお使いになる場合には、必ず電算化直前の戸籍(「平成改製原戸籍」といいます)も併せて取得することが重要です。


(4)戸籍の取り寄せにおける注意点

戸籍をさかのぼって取り寄せていく過程で、下記のような様々な事情が生じてきますので、それらの戸籍がすべてつながるように1つ1つ取得していくことが重要となります(※家督相続や分家は戦前の旧民法の下での制度であり、現在ではこのような制度はありません)。

  1. 被相続人の本籍地が移り変わっている
    (転籍・婚姻などが原因)
  2. 被相続人が入っている戸籍の筆頭者が変わっている
    (家督相続※、分家※、分籍などが原因)
  3. 本籍地と筆頭者が同じであっても、法律の改正で新様式に作り替えられている
    (改製)

  • 1.の場合には、複数の自治体に戸籍を請求する必要が生じることがあります。
  • 2.の場合には、筆頭者が異なる戸籍をすべて取得する必要があります。
  • 3.の場合には、作り替えられる前の旧様式の戸籍(=改製原戸籍)も併せて取得する必要があります。

これらの戸籍を漏らさず取得するためには、戸籍係の担当者に、「被相続人の相続手続のために取得しますので、除籍・改製原戸籍を含むそちらの自治体で取れる被相続人のすべての戸籍をお願いします」と伝えるのが確実です。

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